Writer:mayutan(公開日:2001年1月)

ゴダイゴ。そのバンド名はあなたにどんな印象を与えるだろうか?

音楽番組と言えばベストテン、という時代に一世を風靡したバンド。TVドラマ「西遊記」のテーマソングを歌って、ステージで蜘蛛の糸を投げてたバンド。銀河鉄道999の歌、歌ってたよねぇ?ミッキー吉野ってドラッグか何かで捕まらなかった?そんなおぼろげなイメージを持っている人はまだマシで、21世紀を過ごす若者達はそのバンド名すら知らないかもしれない。いわゆる不当な評価を受けているバンドの一つで、well_knownのテーマでもある「埋もれている情報の見直し」の意味でも取り上げたい。

99年、再結成時のコンサートに私も足を運んだが、客層の平均年齢はどう見ても30代~40代。いわゆる再結成という事でメディアへの露出も多数あったのだが、若者のハートを(笑)つかむ事が出来たかどうかは疑問である。ゴダイゴの存在は80年代アーリーを語る上でも重要な役割を果たしている故に、今回は一つ、彼らの魅力を紹介したい。

【NINAより早かったハイブリッドバンド?】

99年にJUDY AND MARYのYUKI、B52'sのケイト、ミック・カーン、佐久間正英らが結成した世紀末ハイブリッドバンド、NINA。80年代に青春を過ごした中年層は「すごいラインナップ!YUKIずるいぞ」、若者達は「YUKIちゃんが外人とバンド組んだ~誰あのおばさん?でもな~んかすごいパワー」ってな感想をおおむね抱いて、話題になったあのバンドである。最近では多国籍バンドもさほど珍しいという感はなく、話題に上るにはNINAレベルのメンツインパクトが必要だ。

だが70年代後半から80年代にかけてのゴダイゴの存在は「なんかインターナショナル!」という気分をお茶の間にもたらしてくれた。日本人と外人が一緒にバンドを組んでる上に、発音はいいのか悪いのか判らないけど英詞を操り、オリジナルソングをひっさげて世界各国のツアーに出かける姿は画期的だった。

勿論彼らの魅力はそれだけではない。GSの実力派、ゴールデン・カップスを経て渡米したミッキー吉野のアレンジセンス、ビートルズ継承派のメロディメーカー・タケカワユキヒデの、一般受けもツウ受けもする楽曲作り。ゴダイゴはお茶の間に、そして日本のロック界に旋風を巻き起こした。当時はロックを日本語で歌うのか英語で歌うのかで論争になるような御時世。ゴダイゴの、1曲の歌を日本語ヴァージョン・英語ヴァージョンで歌う姿勢は一つのスタイルを提示したと言えよう。

さてゴダイゴと言えば「モンキー・マジック」「ガンダーラ」「ビューティフル・ネーム」等のヒット曲を先ず挙げる事になるのだが、今回はそれらの曲に加え、隠れた名曲も紹介していきたい。

【マジック!蜘蛛の糸!オリエンタル!】

何やら妖しい雰囲気の中、「アチョ~!」という雄叫びを合図にオリエンタル風味の楽曲が展開する。ゴダイゴの代表作の一つ、「モンキー・マジック」である。三蔵法師役に夏目雅子を迎えた名作ドラマ「西遊記」のオープニングテーマである全編英詞のこの曲は、エンディングテーマ「ガンダーラ」と共に大ヒットを飛ばした。ベストテンという番組の中で、ゴダイゴの曲が3曲も10位内にランクインする、なんてとんでもない事も起きた。

そして何故かこの曲、途中でヴォーカルのタケが「蜘蛛の糸」を客席に向かって投げるのだ。あの、歌舞伎で使う小道具だ。(そう言えばイカ天バンドのカブキロックスも使っていたっけ?)当時、そのシーンは「ハイライト!」という感じでワクワクしたものだが、今考えると何故?と言いたくなる。80年代マジックと言えよう。(だが厳密に言うとこれは78~79年の話)西遊記で、モンキーのマジックで、オリエンタルで、カブキで…なんだか不思議な雰囲気を醸し出す役割も果 たしていたのかもしれない。

【名前はひとりずつにひとつ】

国際児童年のキャンペーン・ソングとして、ユニセフがらみで作られた「ビューティフル・ネーム」。全ての子供にはひとりずつ名前がある、というのがこの曲のコンセプトで、つまりは人間一人一人の生命の素晴らしさを歌いあげている。シングルカットされた当時は、A面に日本語ヴァージョン、B面に英語ヴァージョンが収録された。常に海外を意識した活動を心掛けていたようだ。だが意外な事に、ゴダイゴの歌詞をタケカワ本人が書く事はほとんどなかったようだ。作詞はほぼ奈良橋陽子(ゴダイゴのプロデューサー・ジョニー野村の細君)が担当しており、この曲も然りである。途中で子供のコーラスが入るなど、アレンジはベタである。が、子供の笑い声のミックスの仕方に、アヴァンギャルドな香りがしなくもない(笑)ミッキーの仕業だろうか?

【B面の名曲】

21世紀を生きる若者達に「B面」という感覚はない。当然、CDはひっくり返す必要がないからだ。だがC/W、カップリングとは似て非なる感覚がかつて存在したのだ。CDが出現するまで、シングルレコードにおいては「表は売れ線の曲、裏はマニアックな曲」というのがお決まりであったし、アルバムにおいては「A面のラストっぽい曲」だとか「B面の1曲目っぽい曲」といったファジーな位置付けが確かにあった。そんな中で、隠れた名曲というのは大体がシングルのB面だ。当時で100万枚突破した大ヒットシングル「ガンダーラ」のB面、「セレブレイション」。子供ながらに必死で英詞を覚え、歌ったものだ。We're Living and lovingという歌詞は言葉遊びになっている上に、シンプルな真実で小気味良い。(これはタケカワのソロ曲、ハピネスにも通じる)女性コーラスから始まるゴージャスなアレンジは、A面としても通用しそうだが、ベタなキャッチーさは無い。ライブではエンディングを飾るナンバーとしてお馴染みの曲だったようだ。

【タイアップソングの王者】

思い返してみると、ゴダイゴのヒット曲は今で言う「タイアップ」が多い事に気付く。CM、ドラマ、映画、国際的なイベント。ポップで聴きやすい曲調、ヒューマニックな内容の英詞・日本詞を操るタケの甘いヴォイス。ゴダイゴの曲は当時の時代の流れに上手くはまったのだろう。壮大なテーマを持つ曲が多い中、あえてここではオチャメなCMソングをピックアップしよう。「RED CHAPEAU」ドラムが印象的な軽快な曲調、全編英詞。で、レッド・シャポーって??ラストにいきなり日本詞登場、「赤いシャポーの味の素~」ブッ!いかにもタネ明かし系。「PEACH NECTOR」タケが歌うと「桃からピーチネクタ~」なんて歌詞も爽やかでロマンチックな曲に聞こえるのが不思議だ。「LET'S GET BACK」森永「小枝」のコマーシャルソング。「こえだ~」「こえだ~」というコーラスが泣ける。

【組曲オンパレード】

ゴダイゴの曲はいくつかのタイプに分ける事が出来るが、壮大でプログレの匂いのする組曲系も少なくない。それらの曲はタイアップで使われたり、アルバムのメインとして収められていたり、多くの楽曲の中でも重要な位置を占める。その中の一つ、エドワード・エルガーの「威風堂々」をモチーフにした「平和組曲」はかなりの感動モノ。

【タケの正統な継承者は?】

以前から私が一人で言い続け、誰も耳を貸してくれない、とある意見をここで書こう。タケのヴォーカルの継承者が今のJ-POPシーン(笑)に、存在する。同じくビートルズ・チルドレンの、奥田民生だ。おそらくタケのソロ曲「ドキドキ・サマーガール」辺りをカバーした日には、ハマりすぎて怖い程であろう、と考えているのだが。「ドキドキしましょう ワクワクしましょう」なんて歌詞もパフィーっぽいし。そして正統な継承者にはなりたくてもなれないが、「今の時代こそ、ゴダイゴのカバーでしょう」なんて言いながらかく言う私も「ハピネス」をカバーしたりする日々である。

【GO-DIE-GO】

クラシック、ビートルズ、プログレ、70年代ロック、フュージョン、そして80年代特有の電子音楽、色んな風味が混じりながらもポップで、お茶の間にも浸透するパワーを持っていた唯一無二のバンド、ゴダイゴ。GO-DIE-GO(行く、死ぬ 、そして再び生きる)というバンド名通り、21世紀の今こそ復活して欲しいものである。それは再結成という意味ではなく、若者の心の中に、という意味だが。

尚、これらの曲のほとんどは、現在でも入手可能な「GODIEGO SINGLE COLLECTION VOl.1、VOl.2」「GODIEGO GREAT BEST VOl.1、VOl.2」などのCDに収録されている。99年の再結成時にリリースされた「What a Beautiful Name」では「ビューティフル・ネーム」のニュー・ヴァージョンが聴ける。 (参考データはこちら↓)

楽曲データ:

  • 「モンキー・マジック」(アルバム「西遊記」収録)
  • 「ガンダーラ」(アルバム「西遊記」収録)
  • 「銀河鉄道999」(アルバム「MAGIC CAPSULE」収録)
  • 「ビューティフル・ネーム」(アルバム「MAGIC CAPSULE」収録)
  • 「セレブレイション」(アルバム「西遊記」収録)
  • 「RED CHAPEAU」(アルバム「CM SONG グラフィティ 」収録)
  • 「PEACH NECTOR」(アルバム「CM SONG グラフィティVOl.2 」収録)
  • 「LET'S GET BACK」(アルバム「CM SONG グラフィティVOl.2 」収録)
  • 「平和組曲」(アルバム「平和組曲」収録)「ドキドキ・サマーガール」
  • (シングルカット)「ハピネス」(アルバム「MAGIC CAPSULE」収録)

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