Writer:ハルピンさん(公開日:2001年3月)
今、「私はマイケルジャクソンのファンです。」と真顔で言い切れる人は世界中に何人いるでしょうか。私は確かにファンではあるけれど、このセリフを人に向かって発する時には「これはギャグであり、ダサいことを潔く言う楽しいキャラクターの持ち主」の仮面を情けないとは思いながらかぶっています。「マイケルジャクソン」という半ば記号化された響きの中にどうしてもくっついてくる「くずれ整形美白」「少年ダイスキ」「大人キライ」「自宅にゆうえんち」「股間強調ダンス」「でも世界平和」等の付属イメージがそうさせるのかもしれません。ここでは、語り尽くされた感のあるそれらのパブリックイメージはひとまず置いておいて、ほかのことにちょっと目を向けてみたいと思います。
さて、私にとってマイケルジャクソンとは何をおいても「ダンス!」です。80年代に迎えた華麗なる第二次黄金期を記憶している人も多いと思います。そう、すげえ売れたアルバム、「スリラー」です。小中学校のダンス部から忘年会の宴会芸まで応用されたスリラーダンス、誰でもさわりだけは踊れるはず。その影響力はドリフターズによるヒゲダンスに勝るとも劣らないでしょう。。。
マイケルのダンスを見ていて不思議に感じるのは、彼の体つきが他に類を見ないものであるということです。いわゆる黒人ダンサーは、なんというか体中バネでスレンダーながらもマッチョ。彼のように華奢でか細い棒のような体のダンサーは、白人、黄人にもあまり見られません。そしてそのおよそダンサーらしからぬ 身体から繰り出される魔法の数々。
全世界ビックリ。グラミー賞総ナメ! 今でこそプロモーションビデオクリップは様々なものがありお金も時間もかかってますが、当時「スリラー」のストーリー仕立て+ダンス方式はかなり衝撃的でした。同時期にブレイクしたマドンナ、プリンスとともに極東の少年少女にキラキラしたアメリカを見せつけていました。
おりしも世の中はダンスブーム。流行った映画も「フラッシュダンス」「フットルース」「ブレイクダンス」、、、。(みんな「フ○○○ス」ですね~)思わずダンス部に入ってしまった人も少なくありません。ルーズソックス?そんなものはマイケルがとっくに履いています。しかもビーズつき。
日本の芸能界もまた彼の影響を色濃く受けることになります。今のヒロミゴーのスタイルができたのも彼のおかげであることは疑う余地なしです。余談ですがかの有名なムーンウォーク、私はもちろんマスターしました。ビデオもない家でどうしたか。マイケルの動きを見てもわかるわけがない。川崎麻世でもわからない。風見慎吾でもわからない。少年隊ヒガシもうますぎる。。。悶々とする日々に終止符を打ってくれた男、田原俊彦!!ありがとう。トシちゃん。あなたのムーンウォークはすばらしく種が明かされていました。。。
前に書いたパブリックイメージに邪魔されて見落としがちなことがもうひとつ。そう、マイケルは実はとっても歌がうまいのです。「アオ!」「フー!」「パオ!」等のおたけびがよく出てくるようになった「BAD」以前のアルバムを聞くと特によくわかります。なにより子供時代、ジャクソン5、ジャクソンズなんか聞くともうびっくり。激ウマです。「スリラー」以降もいい曲出しているのですが、いかんせんセンスが悪い!おしゃれキッズ達はジャケット見ただけでソッポ向いてしまいます。そのうえ90年代に入るとスリラーの頃の黒豹のような精悍さは消え、よくわからない格好だがハイテクニックで歌い踊る鈴木その子という、いかんともしがたい状況になってきてしまいます。唯一おしゃれキッズにアピールできるのは妹ジャネットと組んだ「スクリーム」くらいでしょう。ダンスや動きがサエてる!と思う作品とそのシーンをいくつか挙げておきます。
映画「WIZ」(内容は「オズの魔法使い」ドロシー役はダイアナロス)のかかし役。臆病なかかしが、くくりつけられていた棒から勇気を出して地面に下り立ち歩き出す場面。足ガクガクの産まれたて具合が絶妙です。
もうやってないけどディズニーランドのアトラクション「キャプテンEO」の団体ダンス。殴られたような気にさえなりました。
グラミー賞でのステージ、ディズニー漫画ばりのヘコヘコ丁稚ダンス。ほとんど動きがアニメーション。
MTVアウォードでのステージ、お決まりのムーンウォークの後に見せた新作ビックリロボットダンス。これは、、本当にロボットです。血が全く通っていません。
これら傑作をここですぐにお見せできないのがもどかしい。でも、「WIZ」はレンタル屋さんにたま~にあります。探せ!賛否両論、キワモノ扱いのマイケルですが、偽善者と言われようと「世界平和」を唱え続ける姿勢は尊敬します。かなり強引にまとめちゃうと、80年代のマイケルはまさに「KING OF POP」。やったもん勝ちのパワーで世界中をかきまわしたのです。
さて、ただの「マイケルジャクソンについての作文」になってしまいましたが、今度彼を見る機会があったら、奇異な外見にはちょっと目をつぶって、同時代に生きている天才のパフォーマンスを存分に楽しんで下さい。